始まりと終わりの箱

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でも最終的に、私はそれに疲れてしまったんだと思う。 彼といることで幸せに感じることは確かにあった。 けれどそれを相殺して余りが出るくらいに、私の心はすり減っていた。 どちらかが、あるいは双方が無理しないと楽しく過ごせないなんて、私にとっては間違っているも同然だった。 だって私は、頑張らなくても楽しく過ごせるような関係が築きたかったのだから。 無理をしなくても心地よく過ごせる居場所が欲しかったのだから。 でももし正直にそう伝えたりしたら、彼はきっと「好きな相手のために努力することは当然じゃないのか」と言ったと思う。 彼の言うことはいつも正しかった──正しすぎるくらいに。 その揺るぎなさのせいで、私は自分自身の希望や信条にさえ自信が持てなくなって。 口にすることなんてとてもできなかった。
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