始まりと終わりの箱

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たった一週間で覆すくらいなら、「待ってる」なんて最初から言わないでほしかった。 あの言葉は「縛り」でも「保険」でもない、ただ彼も私のことを好きだと思ってくれている証明だった。 なのに彼はそれを、この手紙で真っ向から否定した。 きっと「待つ」ことの意味に気づいてしまったからだと思う。 待つということは、「戻ってこなくてもいい」と言いながらもそれを期待することだから。 そう、戻ってこない人を待つことはできない──戻ってこないと認めるのを拒み続けない限り。 だから彼は、「縛り」とか「保険」とか、そんな言葉で自分を悪者にしてその約束を放棄した。 もし私が戻らなかったら、待ち続ける彼の方が壊れてしまうだろうから。
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