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始まりと終わりの箱
箱を開けた途端、あの匂いがふわりと広がった。
ツンと鼻につく、でも甘いあの匂い。
彼の、匂いだ。
そう思った途端、きゅうっと胸が苦しくなった。
彼と会うたび、そばで触れ合うたびに感じていたあの匂い。
感覚器官に刻み込まれた記憶は鮮烈だった。
まだ何もできていないのに、もう涙で前が見えなくなってしまっている。
箱の中には「すべて」があった。
彼と過ごした時間、彼と過ごした証、そのすべてが。
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