いつかおとぎの国みたいに

　くらいくらい部屋(へや)のすみっこで、わたしはひそかに、息(いき)をすう。もう何年(なんねん)も前(まえ)から、くらやみに支配(しはい)されたこの小(ちい)さな世界(せかい)で、わたしは必死(ひっし)にもがいていた。　その漆黒(しっこく)につつまれた部屋(へや)に入(はい)ってみれば、その奥(おく)にガラスでできた水(みず)がめが置(お)かれているのに、あなたは気(き)づくでしょう。わたしは長(なが)い間(あいだ)その水(みず)がめのガラスにはりついて、ガラスのむこう側(がわ)をじっと、みつめていたんだ。

/11ページ