いつかおとぎの国みたいに

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 いつか、おとぎの(くに)王子(おうじ)さまみたいなだれかがやってきて、この世界(せかい)におぼれたわたしを(たす)けてくれるんだって、勝手(かって)(しん)じていた。けれどもそれが、ただのわたしのモウソウにすぎないってことがわかったのは、だいぶ(あと)になってのこと。  わたしは(あらた)めて、ガラスごしに(うつ)(そと)光景(こうけい)をながめてみた。がれきの(あいだ)から、草木(くさき)ひとつ()えないひからびた砂漠(さばく)()えた。レンガのカベも、土間(どま)も、かつて()らしていた住民(じゅうみん)たちが(のこ)していった家具(かぐ)やカーペットも、空気(くうき)さえも、からっからに(かわ)ききっていて、いつあのガレキの(やま)のお仲間(なかま)()りしたって、ふしぎじゃない。
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