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老人ホームに入ってから、祖母に会うことはほとんどなくなった。
行っても私のことをわからないのだから、辛くなるだけなのだから。
悪い言い方をすれば、私は自分のために逃げた。
認知症を患い、記憶を失った祖母。
私の知っている祖母と、今の祖母は違いすぎた。
それに耐えられなかったのだ。
そんな私が久しぶりに祖母に会いに行ったのは、祖母の容態が良くないとの連絡を受けた母から言われたから。
全身状態が悪く、もっても一週間だと主治医から話があったらしい。
その日の夜、私は祖母に会いに行った。
老人ホームの職員に案内されて入った部屋。
祖母はベッドの上で静かに寝息を立てていた。
一目見て、祖母はもう、いつ亡くなってもおかしくない状態なのだと悟る。
浅い呼吸。声をかけても、名前を呼んでも反応はない。
眠り続けることで命を維持しているのだ。
血の気の少ない頬に触れる。
ほんのりとあたかい体。閉じたままの瞼。
そんな祖母を見ているだけで、じわりと涙が滲んだ。
付き添ってくれた叔母と共に職員に挨拶をして老人ホームを出る。
泣き崩れそうになるのを耐えて、自宅へ帰った。
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