第1章 きっとわたしだけ…。

2/50
前へ
/123ページ
次へ
「あなたは確か…。」   その時わたしの思考回路が止まった。元々人の名前を覚えるのが苦手だというのもあるのだが、それ以前にわたしは、同じクラスの子はもちろんのこと隣の席の子ですら会話を交わしたことがないからだ。  人見知りという理由もあるが、基本わたしは授業以外ほとんど教室にいない。昼休みとかは図書館にいるし、それも一番目立たない場所にいる。 「あーごめんなさい。いくら考えてもあなたのこと隣の席の子だということしか思い出せないの。あなたは三木さんでしたっけ?」    わたしは、適当に当たってたらいいなーという軽い気持ちで名前を言った。 「惜しい!!『み』だけは合っている。わたしはみどりすいよ。美しい鳥って、書いてみどりって、読むの。すいは水って、字よ」  全然惜しくもなかった。わたしは間違ってても二木(にき)さんかありふれている佐藤さんか田中さんだと思っていた。よりによって、珍しい美鳥さんだとは…わたしの想像のはるか上をいった。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加