婚約破棄です

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 「公爵家の跡取りとして申し分無いお方ですから、きっと愛する婚約者様の事を考えておいでなのですわ」  私はやんわりと嗜めた。それ以上、友人達は何も言わなかったけれど、今夜の事は、私の失態では無い事が理解されただろう。  少しは、これからのシーズンが楽になるかしら。  ちょっとだけ打算的な事を私は考えてしまった。こういうところが貴族令嬢なのかもしれない。でもこれ以降、私はあからさまな視線を浴びずに済んだので安心しました。  ***  それからまた時が経って、婚約破棄をされてから3ヶ月。ある日私はライアネットー様からお手紙を頂きました。  「お父様……」  「余りにも我が伯爵家を、パールミルアを馬鹿にした手紙だよね」  開封されていたので、お父様は読まれたのだろうとは思ってましたが、温厚なお父様がさすがに怒っていらっしゃいます。内容は。  ーー仲直りしよう。パールを正妻でミネアを愛妾にしようと思うんだ。それなら君も戻って来やすいだろう? 5日後の夜会では、パールをエスコートしてあげるよ。  というものでございました。……私が大好きだったライア様は、こんな頭の中がお花畑の方でしたでしょうか? もし、前からそうだったのなら、私は見る目が無かったのかもしれません。……公爵家の跡取りとしては、かなり優秀なお方だったはずなのですけれど。おかしいですわね。それとも、ナルミネア様が恋人になってから、なのでございましょうか。そうだとしたら、公爵家としてもかなり由々しき事態では?  とりあえず、私は5日後の夜会の招待を受けていないため、お断りする旨を手紙に認めました。あのお家の夜会は、私がライアネットー様の婚約者だから、招待されていた事くらい、私でも解る事ですのに。何故、ライアネットー様がそれにお気づきになられないのかしら。  そして、お父様は余りのライアネットー様の酷さに、恐れながら……と思いつつも、公爵様宛に抗議のお手紙を差し出していました。そのお返事は、公爵家の従僕ではなく、執事が直々に手紙を持参して来る程でした。どうやらライアネットー様に甘い公爵様でも、寝耳に水の事態だったようで。  「旦那様が、この件に関しては、さすがに怒っていらっしゃいまして。愚息が申し訳ない、と伝えて欲しい、と」  執事の口添え付きでした。
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