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第3章
今日も怯えた灰色の空はかわることなく、ヒンドゥークシュ山脈が街に迫っています。
少年は朝から、染みついた地鳴りのように騒めくコティサンギの十字路に立ち、あの幼馴染みの少女を探していました。
荒涼とした世界しか知らず、学校へも通わない子どもたちが街を彷徨っています。
彼らもまたスリをするつもりなのでしょう…
ふと少年に、アフガニスタン女性の伝統的な薄青いブルカで身を包んだ1人の女性が、立ち止まった車や行き交う男たちに声をかけている様子が、目に飛び込んで来ました。
ゆっくりとした動作で、時には執拗に道行く男たちに声をかけています、ブルカに隠された顔は見えませんが、つねに手の平を上に向けて差し出していることから物乞いをしているようです。
その姿は、まるで信仰も思考も停止し人間の尊厳すらも放棄しているかのようです。
しかし少年には見覚えのある姿でした。
もしかしたら、あの少女の母親ではないかと思われました。
近づいて声をかけます、女性はとても驚き怯えましたが、やはりあの少女の母親でした。
少女と母親は、まだこのカブールにいたのです。
少女のことを尋ねるとようやく母親は、もうすぐこのコティサンギの十字路にやって来るだろうと教えてくれました。
少年はアフガニスタンの太陽の光の下で、蠢く雑踏のコティサンギの十字路のそばの立木の下に腰をおろし、少女がやってくるのを待ちました。
少女の碧いひとみを想い出しながら…
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