凍瀧(いてだき)

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故郷を出たのは大学卒業の時だった。 高校まで娯楽もコンビニすらない田舎にいた俺は 東京の大学で、都会の華やかさと楽しさにすっかり心を奪われてしまった。 大学を出たら親父の友人の娘のユキと所帯を持って、 農業を継ぐことになっていた。 ユキとは幼稚園の頃から一緒に転げまわって遊んだ仲だ。 親同士で幼い頃から決められた事で、今更嫁にするなどピンとこない。 泥にまみれ、会う人は皆知り合いばかりの田舎で 生きて行く事なんてもう無理だ。 俺は親父と大喧嘩の末、東京に飛び出した。 ユキにはいい人を見つけろよ、と言って涙で送られた。
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