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列車に乗っても落ち着いて座っていられない。
うろうろと彷徨い明け方に疲れ切って座り込むと、
朝日が真っ暗な外を赤く染め上げた。
灰色の雲も薔薇色に染まり、あたりの景色が照らし出される。
もう都会の景色はそこにはなく、
広い田園の風景と、遠く山並みが続いていた。
あの山のその向こうに俺の故郷があるんだ。
電車をふたつ乗り換え、村の入り口に行く始発のバスに間に合った。
バスを降りると、夢にまで見た懐かしい風景がそこにあった。
こんなに美しかっただろうか。
俺は思わず子供のように走り出した。
この坂を下り切ると、川を渡って広い広い畑があり、
その向こうがユキの家だ。
何と言って謝ろう。
何と言って許して貰おう。
考えのまとまらない内に、ユキの家の前に着いた。
何十回・・何百回この家の引き戸の玄関をくぐっただろう。
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