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不安じゃなかったと言えば嘘になる。だけど、そんなもの一切相手にしなくて、彼は家族を一番に考えてくれる人だと思っていたのに。
「やっぱり……我慢できない……!」
下唇を噛んでしまうくらいの勢いで独り言を呟き、紙袋に手を伸ばす。
そんな私の行動を止めたのは、仕事から帰ってきた娘二人の声だった。
「ただいまー」
「お、おかえりなさい……」
慌ててリビングルームの方に行くと、ニコニコと笑った二人がすでに寛いでいた。
今日はお互いの恋人同士を呼んで四人で遊びに行ったから、二人とも家まで送ってもらったらしく、両方の顔はとても満足気で幸せそう。
そんな娘二人を見ていたら、モヤモヤしていた気持ちが幾分かなくなっていった。
「二人とも今日は早かったのね」
「うん、旅行の話がスムーズに決まったから。日程も行先もみんなの意見がすぐに一致してよかったわ。蓮と匠くんがいつ意見がぶつかり合うか冷や冷やしていたもの」
「匠も丸くなったんですー」
どうやら四人で旅行をする計画を立てたらしく、そのスケジュール調整などを今日、行っていたらしい。
旅行が本当に楽しみなのか、二人とも笑顔が絶えない。
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