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そんな娘たちを見ていて、どんどんと自分が冷静になっていく。
こんな大きく成長した娘たちがいるのに、取り乱してしまうなんて、なんてみっともないのかしら、と自分を叱咤する。
もう、昔のような怒りっぽい私は卒業したのだから、もっと冷静でいなくては、と自分に言い聞かせる。
「二人とも、お茶でも飲む? 今日、紅茶の専門店に行って新商品の茶葉を買って来たの」
にっこりと余裕の笑みを浮かべ、娘たちに声をかけると二人とも喜んで返事をした。
いくら成人をしても私の前ではまだあどけなさが残る二人と見ていると、自然と顔がほころぶ。
「そういえば、パパ、まだ? 今日、遅くない?」
愛莉の声を聞き、紅茶の缶を開ける手に思い切り力が入った。
あの人の帰宅時間が遅い……? たしかにいつもなら帰って来てもいいはず……
「……本当ね。遅いわね。でも、お仕事なのだから仕方ないわ」
「えっ? 今日は休日出勤はなかったはずだよ。美子さんが昨日、そう言ってたもの」
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