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南輸入会社の秘書課で働く姉の結愛は、私より真人さんの勤務状況について詳しい。それに親友の美子は今は、彼の社長秘書。
その美子からの情報だから、結愛が言っていることは間違いない。
「……パパ、どこに行ったのかしらね」
「ママ……声が怖いよ」
引きつった笑顔で放った言葉は、愛娘の愛莉が恐怖を感じるほど圧があったらしい。
私は急いで表情を戻し、上品に笑った。
「怒っていないから大丈夫よ。ちょっと連絡がないから心配なだけ」
「お父さん、何も言わず出て行ったの?」
それでも、結愛は私のことを心配して不安げに聞いて来る。
心配性のこの子のことだからきっと、私と真人さんがケンカするとでも思っているのだろう。
「朝、行ってくると言ったきり帰ってこないわね。だから、てっきりお仕事に行ったのかと思っていたわ」
「そ、そうなんだ……余計なこと言っちゃってゴメンね……」
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