●第一章●

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「もう部活の時間なのね。行ってらっしゃい。あっ! 今週試合よね? 絶対に観に行くから!」 「い、いいよ、来なくて……恥ずかしいから」 「えー、そんなふうに言わないでよ」 「ホント、来なくていいから。みんなにもそう言っといて」 今年でバスケットボール部を引退する悠人の試合を観戦に行ける数は残り少ないというのに、大きな大会以外の応援はなかなか行かせてくれない。 恥ずかしいっていうのが理由らしいけど、弟のかっこいい姿を見るのは私の楽しみに一つでもあるのに残念だ。 くるっと背中を見せて歩く弟の後ろ姿は、スーツを着たらお父さんと間違えてしまうんじゃないかってくらい、お父さんと悠人は最近そっくりになってきた。 恥ずかしがり屋で頑固な性格は絶対にお母さんに似ていると思うけれど、容姿はお父さんそっくりだ。 「我が弟ながら、惚れ惚れするくらいかっこいいわぁ……」
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