●第一章●

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ウットリとため息をついたあと、悠人に言われた通りにドアを開け、愛莉の布団を引っぺがしにいく。 「えい!」と思い切り布団をはぎ取ったら、「ひゃあ!」と、愛莉の情けない声が聞こえてきた。 「うっそー……お姉ちゃん、信じられない……」 「もう何回声をかけたと思ってるのよ。さっさと起きなさい、電車に乗り遅れるわよ」 「満員電車が嫌だから、今日もパパの車で行くからいいもん……」 「だめ! 今日こそは一緒に電車に乗るの!」 甘え上手の愛莉は、何かと理由をつけて満員電車を避けてお父さんの車に乗って通勤しようとする。 容姿も若い頃のお母さんにそっくりだから、お父さんは愛莉に甘えられた時は特に弱い。 こんな感じで愛莉は昔から要領がよく、祖父母からもかなり可愛がられている。 長女だからしっかりしなくては……という考えで育ってきた甘え下手の私からすれば、かなり羨ましい。
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