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その日、日堂 康太(ひどう こうた)こと“コウ”は、友人の青 隆太(あお りゅうた)の“アオ”と最近のコ〇ケの有料制度について、オリンピックが終わった後、
どのくらい続くのか?
という事を熱く、非常にあ・つ・く・語っていた。
「今年の冬コ〇ミはやはり、ジャンル的にはソシャゲがメインだったが、そろそろ、アニメ化作品等々の二次創作を観てみたいもんだぜ。」
「しかし、コウ、そーゆうて、お前が出した同人誌だって、ほぼ、そのソシャゲ作品にあやかったモンじゃねぇか?」
「うっせぇ!可愛けりゃ、何でもありだぜ!!あー、畜生、ホラーも現代ファンタも
全部、落選…小説方面もテンで駄目…新年早々ツイて…ん?」
色々溜まった、創作鬱憤、心情?を吐露しまくりのコウの手に冷たい何かが落ちる。
「雪?珍しいな、オイッ!この辺じゃ雪なんて…グフゥッ」
「ア、アオーッ!!」
喋るアオの顔面に非常に形の良い足が、雪の舞う空の大気中から、にょきっと現れ、アオの顔に綺麗に収まっていた。
状況不明、いや、ラノベとか、特撮、B級映画大好きの自分なら、わかる。これは別時空からの一撃、もしくは亜空間からのナ・ニ・か・だ。
ただ、自分の思考と体は必ずしも一致しない。頭では理解と判断が的確でも、体はしごく
呆然自失状態のコウの耳に冷たい声だけど、何処か愛嬌のある、オタク的に言えば、可愛い声で短く
「あ、いっけない!しっくじったー」
と言う声が響き、ゆっくり足が消えていく。
我に返り、スローモーションで崩れ落ちるアオの元に駆け寄ろうとするコウの眼前に、再び雪が舞う。
思わず、足を止める彼の眼前に小さな亀裂が走り、そこから切れ長の瞳が覗く。
「次は外さない、覚悟せよ、日堂の者!」
相手の狙いが自身に非常にピンポイントという事に気づき、アオを助ける事も忘れ、コウは
その場を逃げるように駆け出した…
「父ちゃん!大変だ。あのよ、聞いてくれ。今日、あのさ!いきなり、空間破って、綺麗な生足が出てきた。そしたら、足がアオの顔面と異各部あり得な結婚!」
「馬鹿野郎!落ち着けぇっ!」
助けを求めに飛び込んだ我が家の第1歓迎委員会は鋭い一撃だった。
恐らくアオが受けた一撃と恐らく同等のモノがコウの顔に決まり、家に上がりかけた体を吹き飛ばす。
「酷いぜ、父ちゃん、色んな出来事がオールでHEADを占めてるってぇのに、こちらとら、
大パニックだぜぇっ!」
「言わんでも大体はわかる。あれだろ?空間割れて、何か拳とか突き出されたんだろ!
それは“雪女”だ。ワシん時は“手”までだった。この片目の上の傷は匕首でやられたもんだ。そうか“足”まで出てきてきたか?となると…あれ?お前でウチの代は七代
か…あー、やべぇな。そらやべぇっ!」
「とりあえず、詳細キボンヌだぜ!父ちゃん!」
ボリボリと頭を掻く親父が立ち上がり、語る内容に、コウは驚くより先に“これ、ネタにして、創作すればえかった…”と激しく後悔した…
ろーんぐ、ろーんぐアッゴウウウゥゥゥーーー!!
(コウ:いや、父ちゃん、そーゆうのいいから)
あっ、そう?わかった!
むかーし、昔な。ワシ等、日堂家の者は、又の名を日堂衆という、今でいう所の
テロリスト集団みたいな事やっててな。
ここら辺の山で暴れ回っておった。そんな時だ。山の民と仲良く暮らす妖怪共が悪さをする
ワシ等に目を付けた。仲間は皆、狐狸共の怪しげな呪術にやられた。勿論、報復だ。
ありったけの火薬と鉄砲を用意して、ああ、これは大阪の戦いの時に豊臣方から奪った奴ね。
奴等のねぐらごと焼き飛ばしてやった。ワシ等の大勝利だ。その時に略奪したモノで財産を築き、ワシ等は里を下り、金持ちとして暮らし始めた…
異変が起きたのは、その日堂衆党首の息子が、縁側で吹矢のようなモノで狙撃された事から始まる。検出された毒は、山の奥深くでしかとれない種類の薬草…
何とか一名を取り留めた息子は訝りながらも成人し、子を設けた。その2代目が同じくらい、成人になる頃…今度は弓で射かけられた。当たったのは足だから、命に別状はない。
それを見た父は自身が吹矢ときて、次は弓矢と思い出した。
以来、先祖の3代、4代は成人に近づく頃、何処からか不意に来る一撃に備えた。そして、
この代に使われた得物は槍だった。まぁ、二人共、充分に備えていたから、大事には至らなんだが…
やがて、5代になる頃、ワシの父ちゃんな。もう、その頃は戦後の混乱からだいぶ、落ち着いて、代変わり事に起きる一撃を忘れていた頃…
父ちゃんは鉄砲で撃たれた。耳に一撃を喰らった父ちゃんは気づいた。弾の破片を検出し、調べた所、弾の破片に、我等、日堂衆の印が…そこで色々気づいた。
これは過去からの一撃だと…(コウ:父ちゃん、あのさ、そこカッコつけなくていいから)
ああ、ワリい。そうだな。ワシの父ちゃんは色々調べた。すると日堂衆がつけていた日記に
(“まめだな”と言う記録は野暮でぃ、ご先祖様舐めんな)
あっ、いっけねぇ、雪を纏った子連れの娘を逃したかも…と言う、ひと記録を残していった…
そして、ワシが成人の頃に、喰らった寸鉄付きパンチに広がった空間の先には、透き通った頬の白い肌と美しい雪の髪…確信したね。雪女だ。加えれば、彼女が攻撃する空間は広がる一方だな。足が出てきたという事は、次は全身か?大丈夫だ。
彼女の全身像を見るのは、お前の息子か、娘だな。
「いや、親父。俺、結婚する予定も見込みも皆無なんだけど!!」
長い昔話の締めに無謀な未来予想図が少し見え、慌てて反論するコウに、父が
“わかってるよ”と言った風に、非常に悲しい顔をして頷く。
「そうだな。夜な夜な、スイかみたいな乳つけて、頭から犬?猫の耳つけた女の子描いたり、
観たりしてるお前じゃぁな…」
「いや、急におセンチタイム止めろよ。それより、じゃぁ、その雪女の一撃はとりあえず1代につき、1回な訳な。えっ、てかどうやって?どうやって、ここ、つまり過去から現世に来る訳?」
「えっ?いや、そこまでは知らないけどよ。あれだろ?オーバーなテクノロジーなあれだろ?そのおかげで来れてんだよ!察しな。とにかく、我が日堂家が討ち漏らした1匹が
その時代で何等かのテクノロジー、もしくは不思議能力で、徐々に大きくなる空間、いや、これは相手の力が増してるのかも…から、我が先祖に恨みを返そうとしてる訳だ。」
「命を取られる可能性もあんのか?」
「あるだろ?槍とか矢には毒塗ってあったしな。だが、もう大丈夫だ。この代の一撃は終わった。安心しろ」
父の話を聞き、非現実性的要素全てをぶっ飛ばして、ようやく一安心という所かもしれない。
だが、気になった。自身に子供が残せないという事に、もし相手が気づけば、いや、気づけるだろう。相手はどうやら、自由にあらゆる時を、超えられるのだから、じゃぁ、
その時はどうなる?
杞憂を1つ残したまま、コウは残されたアオの事を思い出し、外に踵を返した…
嫌な予感は的中した…
「フヘヘヘ~、俺は美人の雪ねーさんの方に鞍替えするぜ!覚悟しな!コウ!よくも、
俺を裏切ったなぁっ」
今や、安っぽい悪役に変貌したアオが立っている。その隣の空中には亀裂のようなものが入り、胸から上だけの色白美人がこちらを睨んでいた。
「ア、アオ、その隣の人は?
(アオ:「フーハァッ、見りゃわかんだろー!このバスト、あ、Bの発音強くね。
スゥタイル!&着崩れ着物のエロさ、マジエロ(空間の裂け目から拳が飛ぶ)
あ、すいません、とにかく皆大好き!「雪おん…」)
いや、言わなくていい。よくわかった。逆に聞こう。あの、雪女さん?父に聞きましたけど、
その、空間の裂け目からの攻撃は1代につき、1回ってのが通例らしいですけど…」
「アンタの次の代は今の所、ない事がわかったわ。だから、私の力を全て用い、この代のお前を殺しにきた。ここで一族郎党恨みを晴らさせてもらう!」
こちらの問いに少し口元を歪ませた雪女が決意を新たに答える。
「そうだぞ!お前はここで、ぎったん!ばったんに四肢粉砕されるといいさぁー!」
「ア、アオ、お前…一緒にコ〇ケ徹夜組した仲だってのに裏切るなんて!この野郎!!」
「いや、俺は知っているぞ!コウ!お前がしでかした罪を!お前は時間がないからって
“あーっ、髪のRGB間違えたー”とか何とか言って、あらゆるジャンルの子達を適当
描きやがって!」
「それは愛だから!愛故に間違えたんだ!」
「言い訳するな!ニワカ野郎!!」
「何だと、このケダモノフレンズが!何だ、お前が買った18禁同人酷かったぞ?
あれ、ケモナーのレベルを超えていたぞ!この野郎!!」
「いや、あれはあれでね。裸と尻尾、モフモフ含有率がちょうど良くてね。特に胸と鎖骨、尻尾生え周りのお尻の形が…」
「あーもう!うっさーーーーい!!
二人まとめてえぐいよ!とゆー事で!!どっちも死ねぃ!」
2人の会話の意味不明+何となく漂う気持ち悪さを察した雪女が叫び、凄まじい吹雪を空間の割れ目から送り込んでくる。
「グワァアアアア、寒い!そして、足がカチカチに、やっばい、このままじゃぁ身動きがとれなくなるぞ!相棒!?どうする?」
「何、いきなり鞍替えしてんだぁっ?お前ぇっ!今更、遅いわ!」
「いや、いちかばちかだ。考えがある。俺の足見ろー!アイスエイジ!でも、お前の足は
まだ使える。この意味わかるか?」
妙に冷静なアオの顔に凄みが増す。正直、コウとしては…
「その先は言うな」
「何故だ?チャンスだぞ?リアルの感触ってのはなかなかいい。思い出せ!3年前、17年の大田区産業プラザPiOに向かう前の改札前を…」
「いや、言わなくていい!」
「後1分で締まる電車のドアに向けて、俺はお前を…」
「止せ!」
「勢いよく放ったぁーーー!!」
コウの制止を一切無視したアオが勢いよくコウを吹雪く雪女に向けて放り投げる。
数秒の間もなく、怒り→驚愕に顔を七変化させる雪女の表情が目の前になっていった…
恐らくオデコとオデコの固い激突から、そのまま下方向の谷間にスライドしたアオは、
柔らかさと何だか、甘く懐かしい匂いに没頭する前に辺りの寒さに全身を震わす。
「ちょっと、日堂の者!ギャーッ、離れて!人間臭い!離れなさい!!」
「いや、さっむ、ここさっむ!!寒い、なにこれ?えっ、ここ雪山?」
「そー、そー!その通り!!ふふっ、馬鹿めぇっ!自ら躍り込んでくるとは、正に飛んで
火に入る夏、冬の何とやら!思いっきり…だけど、離れて!離れてよおぉぉっ!」
「いや、待ってくださいよ。あの、人肌で人肌温め希望で!えっ?てか、雪女って人肌?」
「妖怪肌!妖怪肌だよぉっ!!離してー!わわわわわ、わかった。よし、1、2、の3で
離すから!!即凍らすとかは無しでね。無しの方向でお願いします。」
「わかった。わかったから!」
「よっおおぉぉし!1、2…」
「あっ、待って!待って!3って数えたら離すの?それとも3と同時に離すの?」
「ええっと、あれだ。3と同時で!」
「OK、はいっ、3!」
1と2は?そして外来語話してね?と言うツッコミ全てを言わしてもらえず、再び勢いよく放り投げられたコウは眼前に広がる新たな割れ目に有無を言わさず、突っ込まれた…
山の下に集まった日堂衆の男達は、暗い夜空に向かって火を起こし、
それらから遠ざけた火薬と鉄砲の準備に余念がない。全員が戦を経験しており、血の気が多い連中だ。妖の妙な呪術にやられた仲間はいるが、残った奴等は誰も恐れていない。後はゆっくり戦いの時を待つだけだ。
それは不意に現れた。夜の闇にポッカリと小さな光が現れ、何か、いや、人が叫びながら落ちてくる。
呆然とする男達の前で、それは雪の中を大きくバウンドし、火薬樽の中に突っ込んだ。突っ込むだけならまだいい。
「いや、やっぱ、半端なく寒いぞ!」
叫ぶ男は飢えたように目線をちらつかせ、櫓に組まれた松明で止まった。それを見た全員の顔が嫌な予感に曇る。
次の瞬間、躊躇う事なく、暖を、火を手にした男は、それを体に近づける。樽の中を踊り回った男の体には、充分な火薬がついていた。爆発が起こるのは、容易、その火花が辺りに引火するのも道理…
巨大な閃光が全てを吹き飛ばした時、日堂衆の全員が今日の討伐は中止、いや、諦めざるおえない事を理解した…
何だか、樽の中で踊り狂い、あまりの寒さに火を持った所までは覚えている。しかし、
その後起きた光以降は意識が飛んでいた。だが、結果として目の前には、足が固まったアオがいる現在の風景に戻ってこれている。
(何が起きたかはわからないが、映画とかアニメでよくある爆発のショックにより、
現代に戻ってこれたという事か?雪女は?ふっ、野暮な事を考えたな、俺…今頃、あの子は…)
「あっ、気が付いた?それじゃ始めよっか?」
「雪女さん、いるー、めっさいるー!」
「うん、お前を過去の穴に謝って、投げ込んだ時、気が付いたの。これで、もしかしたら、歴史は変わる。私の長い復讐も終わるかも…でも、ふと思った。それでいいの?この何百年越しの積年を一瞬で無しに出来る?出来ないよ。だから、現世に頑張って飛び込んできたの。
これからはずっと、ずーっと長い年月をかけて、復讐を成就する事にしたわ。ヨロシクー♪」
すっごい軽い勢いで喋る雪女の隣で、足が凍ったままのアオが
「まぁ、これで仲パイ(仲良くおっぱい?)と行こうぜ?相棒?」
と陽気に話しかけてくるが、全然陽気じゃないコウは雪女が放射し始める吹雪に陰気に頭をガックシ項垂れた…(終)
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