とある昨日についてのお話

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とある昨日についてのお話

SNSアプリを開いて「なーんもないなぁ」と思う。 今日(昨日)が終わった。20代最後の誕生日。 家族以外からのメッセージといえばショッピングサイトからのおめでとう&買ってくれメッセージのみで、一緒に祝ってくれる人もいない。 昨日が過ぎたあと「遅くなったけど誕生日おめでとう、忘れてた(笑)」なんて、ふざけたメッセージがやってきた。 忘れたならずっと忘れていてください。 寂しいやら虚しいやらの感情を自覚したくなくて、心が引っ張られる前にフタをする。 強がり、なんてものは弱い自分を演出するための言葉であってコレはそんな可愛げのあるものじゃない。 意地や無駄なプライドとか、そういう「何か」だ。 そういえばケーキも食べてない。 今更コンビニに行くのもしんどい。 寒いし。 こうやって誕生日らしいこと「○○らしいこと」をしないといけないなんていう常識があるおかげで、自分は「普通」にくらべて欠けていることを意識せざるを得ない。 あぁ、誰か、一瞬でいいんです。 心を無にする方法を教えてください。 そんなふざけたことを言っていても仕方がない。 とりあえず「誕生日おめでとうございました」と心でつぶやく。 外を見れば屋根も道路も白くなって、このまま出たらきっと息も白く染まる。 コートとブーツとマフラーに手袋で完全武装。 午前3時、コンビニでケーキでも買ってこよう。 決して○○ケーキではない。 だって昨日のお話なので。 …凍える寒さの中決意表明いたします。 30代最初の誕生日は「誰か」と一緒に祝おう。
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