言えんが応報

9/15
前へ
/15ページ
次へ
 一方、その突き飛ばした黒い方。コータ。  また、思わずリョウを突き飛ばしてしまった。そうしたら、ガラの悪いチャラチャラしたDKと目が合ってしまった。「やべっ!また殴られる!」と思い、全速力で逃げ出した。  胸が痛くなり息が切れる。追って来ていない事を確認すると、ゆっくり歩きだした。  また、やってしまった。母さんにも、先生にも言われている。悪いとは分かっている。でも思うより先に手が出てしまう。アイツ、もっと堂々としてりゃいいんだよ。グジグジしてるから悪いんだ。 「ただいま。」暗い気持ちでコータは玄関をくぐった。  奥から母親が出てくる。 「コータ。おかえり。あら。元気ないね。」 「別に…。」 「遊びに行かないの?おやつ、テーブルの上にあるからね。」 「今日、父さんは?」 「普通だと思うけど…。あぁ。コータ。」  母親が悲しそうな顔をした。 「ごめんね。お母さんがお父さんに言えないから。今度はぶたないようにお母さん、絶対言うから。」 「いいんだ。オレが悪いから…。」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加