ネズミのボクシング

１

　まだインディアンが闊歩していた頃のアメリカはミズーリ州セントチャールズにサンタクロースが住んでいました。
　サンタクロースの家には「トムとジェリー」に登場するジェリーみたいに壁下に穴をあけてネズミが住んでいました。
　名をブラットといってネズミ仲間の中で断トツの強さを誇っていました。
　何故なら彼は毎日、サンタクロースからクリームたっぷりで栄養満点のホワイトケーキを沢山もらって食べていて、それを他の貧しい栄養失調気味のネズミたちに分けてやらず独り占めにしていたからです。
　或る年も年に一回だけ開催されるネズミたちのボクシング大会が広場の一角で行われると、ブラットが得意のワンツーパンチとアッパーカットでノックアウト勝ちを繰り返し、圧倒的な強さで優勝してしまいました。
　あんまり自分が強くて勝負が面白くならないのでブラットは面白くするにはどうすればいいかと思案しました。
　その結果、どうしてだか、ボクシング大会開催日をクリスマスに変更することにしました。
　ブラットはネズミたちのボスなので何によらず決定権があるのです。