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ー3ー
征臣と僕は、高校の同窓生だ。高1の春、部活見学に訪れた理科室で、初めて顔を合わせた。
教室の後ろに10脚程並べられた、見学者用の木の椅子。窓際の一番端に、彼はポツンと1人だけ座っていた。僕は近付くと、1つ離れた椅子に腰掛けた。
サラサラの黒髪に細いフレームの眼鏡。真新しい詰め襟と校章で、彼が同学年だと分かった。
「君も見学?」
「……ああ」
俯いていた彼は、声をかけると、一瞬僕に視線を投げた後、フイと窓の方へ顔を背けた。
無口で愛想がない男――それが征臣の第一印象だった。もし入部しても、コイツと仲良くなるのは難しそうだ……。
ガラリと音を立てると、上級生が4、5人入ってきた。その中の背の低い男子が、笑いながら僕らに近付いて来た。
「天文部にようこそ! ねぇ、君達。今度の週末の夜は空いてる?」
「えっ、あ、はい」
思ってもいなかった質問に、咄嗟に首肯する。
「君は……?」
隣の無愛想君に、先輩が問いかける。
「はい、空いてます」
さっきとはまるで別人のように、はっきりと大きな声で応えた。既に声変わりを終えたらしく、低めの落ち着いた響きが耳に残る。
「じゃ、決まり! 屋上で観測会するから、来てよね!」
彼が差し出した名簿に、所属クラス、名前、連絡先を書く欄がある。窓側の彼からペンを走らせ、僕も記載した。書きながら、すぐ上の欄の個人情報を盗み見る。
『1年C組 楠城征臣』――何だか戦国武将の末裔みたいな固い名前。無愛想な彼には似合ってるな。
そんな感想を持ったっけ。
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