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 天文部では、毎年8月半ばに、ペルセウス座流星群の飛来に合わせて、OBが経営する牧場の一角を借りて、2泊3日の観測合宿をする。テントを張って自炊して、夜になると流星観測や天体撮影をするのだ。  高校生活最後の夏休み。受験を控えた3年生は、秋には部活を引退する。だから、夏期講習中の貴重な休講日を利用してでも、観測合宿に参加する。僕と征臣は、講習カリキュラムの関係で、2人だけ最後の夜のみの参加になった。 「つっかれたぁー」  乗り込んだローカル線の固い座席に身を預けると、僕は買ったばかりのポカリで喉を鳴らす。脳味噌から化学式が溶け出しそうなくらい暑い。 「マズいな。一雨ありそうだ」  2年の副部長に、現在地をメールしてから、征臣はアプリでこの後の天気予報を確認して、眉をひそめた。 「マジか……。最後のペルセ観測なのになぁ」  僕は、車窓に広がる果樹園らしき風景を眺める。流れる緑の群れに混じる赤い実は、リンゴだろうか。 「台風の速度が早い。現地着く前に降られるかもな」 「げー、最悪」  こんなことなら――無理矢理合宿に参加しなくても良かったかも。向かいの席で英語のテキストに目を落としている征臣をチラと盗み見て、僕は再び車窓に視界を固定した。  連日の缶詰めの疲れが、ズルズルと前頭葉から這い出して、いつしか呑み込まれた。
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