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 ――どのくらい眠っていたのか。何かの気配に、微睡みの波が引いた。 「……くと」  名前を呼ばれたと分かるまでに、時間がかかる。まだ脳が眠っている。それに、声が低く――呼んだのではなく呟きのようだった。 「――……!?」  現実に戻り切っていない、寝惚けた身体に衝撃が走った。けれども、その認識は、受け止めるには更に衝撃的だったので、僕はそのまま寝たふりを続けた。それしか、できなかった。 「……ハァ」  離れた唇の温もりと、冷たい指先。耳に落ちた小さな息は、征臣のもの。  何を――どうして――。  彼の吐息の余韻が消えると、もう鼓動が止まらない。まさか……僕らは親友じゃ、なかったのか?  混乱したまま、僕は薄く目を開けた。向かいの席に座って、征臣は窓の外に顔を向けていた。眼鏡のない横顔は精悍で遠く――寂し気だった。眺めていると、スウッと一筋、流れ星のような滴が彼の頬を濡らした。
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