70人が本棚に入れています
本棚に追加
「征臣」
「ん? ああ、起きたのか」
彼は、態とらしい欠伸をして、目尻を擦った。
視線を受け止める自信がない僕は、ゆっくりと身を起こし、淡く曇った窓を拭く。
「今、何時」
「3時15分」
「雨、止んだんだな」
「ああ」
征臣は席を立つと、開閉ボタンで列車の外に出た。
「北斗!」
少し上ずった声に、はっきりと呼ばれてホームに出た。台風の湿度が混じった土の匂いが立ち上っている。
「あ……わぁ!」
青白い照明が届かない上空に、眩い光の洪水が広がっていた。
「流れた!」
「ペルセ群だ」
流星なんか、山ほど観てきた。痕を残すような強い流星も、天空を横切るほど長い流星も。
大小長短様々な宇宙の欠片が、ペルセウス座を中心に放射状に溢れ出す。
気付いたら、僕の頬にも一筋、流れていた。征臣の感触が蘇る。あの瞬間、冷たい指先は震えていた。
最初のコメントを投稿しよう!