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「……うわ、酒くせぇ」  尿意で意識が戻ると、不快なアルコール臭に目が覚める。天井に光の筋が走っている。カーテンを通り抜けた朝陽が、細く差し込んでいた。何時なのか。ソファーの背に落ちていた頭を持ち上げたら、ガンッと衝撃波が広がった。 「――ってぇ……」  自業自得の二日酔い。いや、元はと言えば、アイツが悪い。本当だったら、今朝は幸せな温もりの中で目覚める筈だった。完全に油断した寝顔をたっぷりと堪能してから、唇で甘く起こして、彼の今日最初の視界を独占するつもりだったのに。 「うぅー……」  呻きながら身体を起こす。水――その前に、トイレだ。  重低音のスピーカーに囲まれた感覚。それでも、すべきことを済ませ、15分後にはソファー回りを片付けた。着替えてシャワーを浴びたい。上着を持ち上げると、スルリとスマホが飛び出し、慌ててキャッチした。  電源を切ったままだった。今日は休日だけれど、仕事の連絡が入らないとも限らない。ボタンを押せば、案の定LINEがアイツのアイコンで埋まっていた。  まだ既読を付けてやるもんか。  ――ブブブブブ 「わっ! ……イテ」  心の声に反応したように、スマホは突然息を吹き返し、驚いた自分の声で額を押さえる。  電話の着信。ディスプレイには【楠城(くすのき)征臣(まさおみ)】――アイツの名前が表示されている。
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