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ー2ー
「……うわ、酒くせぇ」
尿意で意識が戻ると、不快なアルコール臭に目が覚める。天井に光の筋が走っている。カーテンを通り抜けた朝陽が、細く差し込んでいた。何時なのか。ソファーの背に落ちていた頭を持ち上げたら、ガンッと衝撃波が広がった。
「――ってぇ……」
自業自得の二日酔い。いや、元はと言えば、アイツが悪い。本当だったら、今朝は幸せな温もりの中で目覚める筈だった。完全に油断した寝顔をたっぷりと堪能してから、唇で甘く起こして、彼の今日最初の視界を独占するつもりだったのに。
「うぅー……」
呻きながら身体を起こす。水――その前に、トイレだ。
重低音のスピーカーに囲まれた感覚。それでも、すべきことを済ませ、15分後にはソファー回りを片付けた。着替えてシャワーを浴びたい。上着を持ち上げると、スルリとスマホが飛び出し、慌ててキャッチした。
電源を切ったままだった。今日は休日だけれど、仕事の連絡が入らないとも限らない。ボタンを押せば、案の定LINEがアイツのアイコンで埋まっていた。
まだ既読を付けてやるもんか。
――ブブブブブ
「わっ! ……イテ」
心の声に反応したように、スマホは突然息を吹き返し、驚いた自分の声で額を押さえる。
電話の着信。ディスプレイには【楠城征臣】――アイツの名前が表示されている。
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