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征臣の朝食が効いたのか、彼の存在に安心したのか、食後の僕はソファーでウトウトしていた。
ふと、目を覚ますと、彼が隣に座って雑誌を読んでいた。
「なに……読んでんの?」
頭痛は薄らいだけど、ひたすら眠い。半開きで覗き込むと、オリオン座大星雲の赤紫色の写真が飛び込んできた。シロサギが羽を広げたような華やかな形が、三つ星と並んで天文ファンに人気の天体だ。
「ん……M42、トラペジウム?」
「懐かしいな。まだ読んでいたのか」
有名な某天文雑誌。何だ、僕の本棚から持ってきたんだ。
「あの頃から定期購読してるからね、習慣みたいなもんだよ。この街じゃ、ほとんど、見えない……けどね……」
話す間にも、また強い睡魔が襲ってきた。瞼がゆっくり下がっていく中、頬にヒヤリと冷たい指先が触れ、少しだけ意識が引き戻される。
「ん――んっ……」
指先とは対照的に、熱を持った唇が重ねられる。彼の為すがままを受け入れていると、頭の芯が甘く痺れ出し、身体が溶けていく感覚に溺れ――。
「北斗……眠ったのか」
夢に浚われる直前に、彼の低い声が耳の奥に流れ込んで、しっとり染み渡った。
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