彼女は妖怪

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 卓也は彼女の冴香ちゃんにクリスマスプレゼントをあげるつもりだった。今は12月の頭、クリスマスはもう直ぐだ。  卓也はそんなに高くないブランドのハンドバッグとか財布とか色々と考えたが、ちょっと高い毛糸でマフラーを編んであげようと思った。卓也は男だが手芸部に入っている。今時の男子は女子力が高いのだ。  今日は冴香ちゃんがどんなタイプのマフラーがいいかリサーチする為に隣の駅まで電車でやって来た。好きな色は赤だと知っていたが、冴香ちゃんの、お父さんやお母さんの意見も大事だし、赤いマフラーでは派手かもしれないと思ったからだ。卓也は両手で握りこぶしを作って意気込む。  冴香ちゃんはいかにもの日本家屋に住んでいる。卓也は何回か来たことがあるが、冴香ちゃんの部屋は畳だった。今の季節は寒いので炬燵を置いている。炬燵の中で足が触れ合うだけで心時がトキメいて心臓がバクバクした。  あっ、言い忘れたが、冴香ちゃんの首は長い。ろくろ首という妖怪なのだ。だからマフラーを編むのは容易ではないと卓也は思う。  トントン、トントン、玄関の戸を叩く。冴香ちゃんの家にはインターホンが無い。不便じゃないのかと思うが冴香ちゃんは気にも留めない様子だ。 「はーい」  冴香ちゃんの声が家の中から聞こえた。 「僕だよ、卓也」  卓也はにこやかに答える。 「今、開けるね」  冴香ちゃんは横開きの戸をガラガラと開けた。 「外は寒かったでしょ。居間にね、甘酒を用意しておいたの。温まるよ」 「気を使わせちゃったなあ」 「いいの、いいの。私が飲みたかったから、お母さんにお願いしただけ。別に卓也くんの為じゃないの」  そうなんだ。まあ、この冷たいところも、この子の魅力の一つだ。卓也は口角をあげて笑みを浮かべる。
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