31人が本棚に入れています
本棚に追加
うーん、困った。僕も米が食べたい。ご飯と言っておけばよかったな。だけど僕はおかずでは一番に唐揚げが好きだ。だから正直に琴音ちゃんに言ってよかったと少しだけ安堵している。チョコレートを食べている子を探す。隣のグループの男子だった。そのまま周りを観察すると女子は無難なものを食べている。固そうなステーキを咀嚼している子がいた。ステーキも生き残る可能性が高いな。僕は一人で納得する。琴音ちゃんがパンパンと手を叩く。
「今日は、夕飯を食べたらプールの下にあるシャワールームで身体を洗ってくださーい。勿論、寮には帰れませーん。みんなにはここで寝て貰いますね。夜は自由行動だけど、食べ物は明日の朝食まで出ないので、お腹が空いたっていっても何もないよ。だから、よーく寝て、疲れをとってくださいね」
そうか。3食しか食べられない決まりなのか。僕は自衛隊の人に銃口を向けられながらシャワー室に行った。シャワー室に入る前の脱衣所はストーブがあったがコンクリートの床がとても冷たかった。白いタイルのシャワー室には石鹸とシャンプーとコンデショナーが置いてあった。僕は丁寧に自分の身体を洗う。物々しく見張られながら校庭を横切って教室に戻ると机と椅子を後ろに下げ、自衛隊の人が持ってきてくれた布団を敷いた。時計を見るとまだ、夜の7時、テレビくらい見たいのに何もすることがない。大樹くんが「あっ、トランプ発見」と言って片手をあげた。四角いトランプの箱を握りしめている。琴音ちゃんはそれを見て「外と連絡を取らないならゲームをして構いませんよー。オセロもあるし将棋もありまーす。欲しい人は言ってね」と言った。
「人生ゲームは?」
僕は訊く。
「うん、あるよ。だけど勝ってもご褒美は無しだよ」
なんだよ、ちぇっ、僕は舌打ちするが、状況が状況だ。ゲームの勝ち負けに拘っている場合ではない。
「春生、みんなでさ、神経衰弱やろうよ」
大樹くんが真剣な顔をして言う。その日は11時くらいまで、みんなでトランプをした。
最初のコメントを投稿しよう!