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夜は中々寝ることが出来なかった。神経が異常に高ぶってしまったんだろう。床の上に布団を敷いただけなので、それも凍えるほど寒かった。ストーブがなかったら凍死していただろう。ふと通勤バッグを見るとマフラーが結ばれていた。そうだ。寒いから通学時は何時もこのマフラーを巻いているんだ。僕はマフラーの匂いを嗅ぐ。自宅の匂いがして少しだけ心が落ち着いた。僕はマフラーを枕の横に置いて寝た。
次の日は7時に目を覚ます。一瞬、何処にいるのか分からなかった。そうだ、生き残りゲームの最中だったんだ。隣で大樹くんが布団をはいで寝ている。
「大樹くん、朝だよ」
「ああ、んん?ここは何処だ?」
「学校だよ。ホラ、好きな物しか食べたらいけないゲームの途中だろ」
「夢じゃなかったんだ」
大樹くんは目を擦る。
「ああ、僕も夢であってくれと思ったよ」
「昨日、ブロッコリーしか食べてないからお腹空いたよ、早く朝食にならないかな。でも、どうせブロッコリーか。ちくしょう」
「達哉くんはいいよなあ、ハンバーガーらしいぞ」
大樹くんは目を大きくする。
「琴音ちゃんが訊いて回ったんだろ。普通さ、女子に訊かれたら、お弁当を期待するだろ。だから、ハンバーガーとかチョコレートって答えた奴の気が知れないよ」
「確かにそうだな」
僕はウンウンと頷く。琴音ちゃんが前のドアから教室に入って来て大声を出した。
「朝食は8時でーす。それまでに布団を畳んでくださーい。昨日の夕食の時みたいに机を合わせること。それから体温測定と血圧測定がありまーす」
そんなのがあるんだ。僕たちは名前の順に並んで健康測定をした。誰も調子の悪い子はいなかったらしく、琴音ちゃんが頬を上にあげて言った。
「チョコレートしか食べてない子がいるからね。血糖値や中性脂肪も血液検査しまーす。あ、でも、見たところ、まだ、みんな健康みたいですね。よろしい、よろしい」
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