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「春生くん好きな食べ物教えて」
学校からの帰り道、北海道の札幌市にある白樺ヶ丘高校の学生寮に向かう途中、突然同じクラスの琴音ちゃんに聞かれた。今は12月の終わり。雪は降り積もり風が冷たく頬をビューっと撫でる。僕は寒いのでマフラーを口まで巻いた。頭には目深にニット帽をかぶっているので目だけがしばしばしている。僕は宮下春生、凍てつく寒い街のクリスチャン制の私立高校に通う学生だ。この高校は全寮制になっている。
「ねえ、早く教えてよ」
「え、なんで?僕の好きな食べ物聞いてどうするの?」
突然の事だったのでなんて言葉を返すべきか解らない。
「いいから、いいから」
琴音ちゃんは僕の隣を歩きながら顔を覗き込んでくる。
「そうだね。唐揚げかな」
こんな事を聞いてどうするんだろう。もしかして僕に料理をしてくれるのかな。この学校は男子寮と女子寮がある。行き来は許されていないからお弁当を作ってくれるのかもしれない。でも、まさか、クラスのアイドルの琴音ちゃんが僕なんか相手にしてくれる訳がない。
「唐揚げかー、無難な選択だね」
琴音ちゃんはクスリと笑う。
「大樹くんはブロッコリーって言ったんだよ。可哀想に」
可哀想?何を言っているのだろう。
「達哉くんはハンバーガー、正解、正解。あー、チョコレートって言った子もいたっけ」
「琴音ちゃん、何を言ってるのか解らないんだけど」
「あ、たぶん、みんなクラスに引き返して集まってると思うよ。春生くんも急ごう」
えっ、また学校に戻るの?
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