トマトの神様

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店長になった私は、基本遅番ばかりになって、帰宅時間は毎日遅い。 だからかはわからないけど、トマトの神様、いや、輝人くんと会うことが多くなった。 今は、会えば彼は軽く手を挙げて、ふわっと私の大好きな笑顔で笑ってくれる。 あの時、あの場所で、あんな変な出会い方をしなければ今はない。 彼に出会わなければ、今も修二のことを引きずって、暗い顔で過ごしていたかも知れない。 出会いって不思議で、尊いものだと気付く。 「舞衣ちゃん、今日もお疲れ様、随分暖かくなってきたね」 「うん、お店はもう、すっかり春だよ」 「そっか〜」 他愛もない会話。 こんな小さなことに幸せを感じる。 横で笑ってくれる人がいるから… 素でいさせてくれるから… 泣いても、笑っても、全力で励ましてくれるトマトの神様。 これからも、私に幸せをください。 心の中で願掛けをして、隣で笑う赤い彼に、最高の笑顔を向けた。 完
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