45人が本棚に入れています
本棚に追加
食べ終わった後に、店でダラダラしたくない彼は、いつも早く店を出ようと言う。
でも、今日は食べ終わっても「行こう」とは言わない。
言葉は少ないけど、私と久しぶりに会えたことを楽しんでくれているのかなと、単純にそんな風に思うことにした。
彼のペースに合わせて、普通にお喋りしていると、私の話を遮るように「あのさ」と言ってきた。
「ん?」
「別れよ」
「え? えぇ?」
予期せぬ言葉だった。
「舞衣さ、仕事忙しいみたいだし、これから店長になったらもっと忙しくなると思うし、やっぱ俺、もっと会いたいんだわ」
「ちょっと待って、会いたいなんて、今まで言ってくれなかったじゃない」
「舞衣は、俺が会いたいときに会えればよかったの?」
「そうじゃ…ない もちろん会いたいけど、修二が忙しいと思って我慢してたし、私も忙しかった」
「だろ? 結局仕事が一番大事で、俺の存在は舞衣の中でそんなもんってことだよ」
「ち、違う!」
「これ以上関係を続けても、お互い我慢して、寂しい思いして、結局別れるだけだと思う 俺は今年29だしさ、舞衣は今結婚したくないだろ?」
修二の言ってることは理解できた。
でも、突然すぎる…
でも彼はきっと、会えない間ずっと、私たちの未来を考えていたんだろう。
修二の性格をよく知っている私は、決断した以上、彼の気持ちがブレることがないことくらいわかっていた。
だからもう、言い返す言葉がなかった。
三年も付き合ったのに、結局本音をぶつけることのないまま、別れることを承諾する、聞き分けのいい自分に心底腹が立った。
泣きもしない私を、冷たいと思っただろう。
最初のコメントを投稿しよう!