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「昨日はバリご機嫌な感じだったっちゃね?鼻歌歌う女性って好きですよ、俺」
「恥ずかしいとこ二回も見られちゃってるのに、そんな嬉しいこと言ってくれるんだ」
やっぱりこの人は、トマトの神様かも知れない。
私を幸せにしてくれるような言葉をくれる。
もしかして、夢かな?
「今日は俺がぶつかって泣かしちゃったんだし、昨日のあれも、全然恥ずかしくなんかないです! 気持ちを素直に表現することは素敵なことです」
あー、やっぱり夢かも知れない。
こんなこと、言われたことないし、どちらかと言うと、私は自分を表現するのが苦手だし、きっとなにかの間違いだ。
「赤い人って、詐欺師かなんかですか? 口が上手すぎるんだけど」
「赤い人って…俺? えっ?!詐欺師じゃないっちゃよ」
ぶんぶんと手と顔を振って完全否定を全身で表現する彼が可愛くて、また笑ってしまった。
「ごめんなさい 失礼なこと言って…私、疑ぐり深いし、素直じゃないんで…」
そう言ったところで、急にこの状況が恥ずかしくなり、困った顔の彼にも申し訳なくて、急いで立ち上がろうとしたら、コートの裾を踏んでコケそうになってしまった。
「おっと、大丈夫ですか?」
咄嗟に助けてくれた彼の腕が、以外にもたくましくて、華奢だと思っていた目の前の赤い彼を、不覚にも男だと意識してしまった。
振られたばかりなのに、何考えてるんだ、私。
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