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しかし、良晴という貧乏な彼氏を持つ恵子は斯様なカップルを見ても痩せ我慢して敢えて笑顔を作って楽しそうに見せ、羨ましがる素振りなぞ露も見せないのだ。
彼女は女の御多分に漏れず虚栄心が強いからだ。
そして恵子は高級ブランド商品が展示してある所には目もくれず、安物アパレル商品が陳列してある前で猶も笑顔を作りながら良晴の寒い懐を当てにして一つのマフラーを指さしてこう言うのだ。
「私、これが良い!むっちゃ柄が可愛いもん!」
「それよりこっちの方がハイコスパでいいんじゃない?」
「あっ、そうね。その方が良いかも!」
恵子は柔順にそう答え、マフラーを良晴に買ってもらって店を後にしてから早速、首に巻いて見せ、街ゆく人々の目を意識すると、見栄を張って笑いながらこう言うのだ。
「とってもあったかい!ねえ、似合う!」
「うん、似合ってるよ」
「私、めっちゃ嬉しい!」
勿論、笑顔でそう言うのだ。
が、笑顔や言葉とは裏腹に心の中では、ちぇ、980円かよと文句を呟くことになるのだ。寒い思いをしながら・・・
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