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それから一週間後の日曜日、恵子は良晴と溜息をつきながらウィンドウショッピングしていると、ブティックから男に連れ添われながら鰐皮のバッグを持って出て来た女と遭遇し、擦れ違いざま良晴に言った。
「さっきの、こないだ、彼氏に108万のバッグを買ってもらった女じゃない?」
「えっ、そうだったかなあ」
「そうよ、あいつが持ってたバッグ見なかったの?」
「あっ、そう言えば、何か艶々していたなあ」
「それにあいつが巻いてたマフラーも艶々してたじゃない」
「ああ、そうだね」
「あれもブランド品ね。多分、シルクとカシミヤで出来てるんだわ」
「へえ~、一目見ただけでよく分かるね」
「分かるわよ。女はそういうのに目敏いんだから」
「へえ~、流石」
「何、感心してるの。そんなことで感心するより私にいいもん買って見栄えの良くなった私に感心してよ!」
「い、いや、何て言うか、君、どんどん貪欲になるね」
「貪欲も糞もないの!女の欲求を満たせないような男はダメ男って言うか、男失格よ!」
「ず、随分な言い種だね・・・」
「だって私、あいつに勝ち誇ったようににやつかれたから頭に来たのよ!」
「ああ、そうか・・・女の闘いだね」
「何、呑気に言ってるの!私、よっくんにも頭に来てるのよ!」
「えっ、ああ、そ、そうなのか」
「もう、あんたって鈍いから嫌!私、決めたわ!」
「えっ、な、何を?」
「あんたと別れて経済力のある男と一緒になるわ!」
恵子はそう言い捨てるなり良晴から足早に去って行った。
余りの突然のことに茫然自失となり立ち尽くす良晴。
所詮、女という者はそういうものなのか・・・と残された良晴は、ぼんやりと諦観するのだった。
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