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7月21日 最後の詩 35。
不安そうな彼の腕を掴むと何度も振った。まるで子供の頃にした手遊びのように。
「もちろんです! パンケーキすごく美味しかった。また食べたいです。作ってくれますか?」
「うん、作るよ。……良かった」
心から安堵したように微笑む彼は今まで見たどの表情より幼く美しかった。きっとこれが素なんだろう。
「それじゃ僕はスープを作ります。野菜がいっぱい入ってるミルクスープが得意なんです」
「美味しそうだね、うん、食べたいな」
囚われていたあの場所がなくなった彼は軽やかに笑った。縛られていた楔はもうないのだ。
自然に並んで歩き出した。未来のことを話しながら、何度も笑い合う。
墓石の薔薇がゆらゆらと、これからの未来を祈るかのように揺れていた。
完。
※
お墓で薔薇の花束を持った美貌の男性が詩を口ずさむシーンを書こうと思ったら、思いの外長くダークになってしまいました。
もっと救いようのない話にしようか迷って、助けてしまったヘタレ作家でした…。
明日からは少し明るい話を考えようと思います笑
長くお付き合いありがとうございます!
byのき。
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