7月29日 夏よ終わらないで。

1/1
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ

7月29日 夏よ終わらないで。

240beb7c-2827-4fba-bbcc-b4f1455916bd リリンっと自転車の軽やかな鈴の音が鳴った。 「お待たせ~」 ジリジリと焼けつく太陽を背にしょってあいつが手を振る。 これからふたりで冒険にでも行けるようないでたちで、だけど向かうのは塾の夏期講習だ。 「宿題やった?」 「ギリ。さっきやっと終わった」 放り込まれた塾の隣に席にいたのは、しばらく会わなかった幼馴染だった。 久しぶりの会話はぎこちなかったけれど、話せばすぐに元通りの親しさが戻ってくる。 待ち合せて一緒に勉強して、終わったらどこかでお茶をして。 懐かしい時間は一瞬で現実に姿を変えた。 夏がこのままずっと続けばいいのに。 あいつの背中を追いかけながら祈るように願う。 夏よ。どうかまだ終わらないで。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!