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7月30日 間接キス。
数年ぶりに集まった同窓会で、ずっと好きだった人が隣に座ってお酒を飲んでいる。
さり気なく触れる腕が少しだけ汗ばんで、これが現実だと教えてくれる。
いつの間にこっちを見ていたのか、ぼくのグラスを指さした。
「さっきから同じの飲んでるけど美味しいのそれ」
「美味しい、の、かな?」
普段めったにお酒を飲まないから何を頼んでいいのかわからなくて、同じのを繰り返しているだけだ。
「ふはっ、わかんないで飲んでんのかよ。どれ」
ためらいもなくグラスを手にして、ぼくのお酒を口にした。
今まで口をつけていた場所に彼の唇が触れる。
グラスを返されて、挑むような視線を向けられた。
「間接キスしちゃった」
水滴が浮かぶグラスをぼくも煽った。
彼の触れた場所に僕の唇も触れる。
「これからどうする?」
テーブルの下で指が絡まって、長い夜が始まる。
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