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2022/11/4 むにむに
マットに手をつき横這いになった。ぐっとお尻を上げ足を踏ん張ると犬のポーズを取る。お尻を数回振ってポーズを深めるとインストラクターが寄ってきてサポートされた。
際どい場所に手を添えて、さらに尻を上げろと言う。開いた足といい無防備な姿だ。
「はーい呼吸を止めないで」と甘ったるい声に嫌な予感がする。
夜間の男性ヨガクラス。
いかにもな風情の人もいるけど、だいたいは運動不足を解消する為に来た人間が多そうだ。
横を見ると次はそちらがサポートされていた。
触れている場所は足の付け根あたり。もちろん邪なものじゃなく正式なサポートだ。際どいと思ったこっちがやましい。
「では次は前屈ぅ」と、露出多めのインストラクターがマットのそばを通り過ぎて行く。
筋肉マッチョではあるけど柔軟性も持ち合わせている僕はすんなりと二つに折れた。足の裏を掴んでさらに深める。
いてててと情けない声が聞こえて再び隣を見る。
あーあ、とため息が出そうになった。
前屈する男の背中にインストラクターが体を乗せ圧をかけていた。キャミソールから溢れそうな乳がタユタユと背中に押しつけられている。
痛いと言いながら顔が嬉しそうに歪んでいるのは痛みを喜んでいるのか、乳を味わっているのか。間違いなく後者だろう。
あーあ、ともう一度思った。
一応恋人が隣にいるんですけど。
なんでこんな女好きを好きになっちゃったかな。そしてなんでこんなマッチョな僕を好きになってくれたのなあ? 今でも不明だ。
でも付き合って一年近くが経っている。
クラスはこんな感じに接触多めのまま終わりを迎えた。これで生徒を取っているとしたらハニトラが過ぎる。
ロッカーで着替えている間も恋人はご機嫌だ。
インストラクターが可愛かったとかいい匂いがしたとか、ナイスおっぱいとまで口にする。
「そんなにいいおっぱいだった?」
「そらーそうだろ。たわわに実る果実っていうの? 南国フルーツのような大きさと弾力。たまらんね」
「へえ」
「いいな、ここ。また絶対来よう。毎日でも通いたい」
だらしないほど緩んだ顔を自覚してんのかな。
男の恋人がいるくせに、いかにも女ってのがタイプなんだよな。嫌ってほど知ってる。
「そんなにおっぱい好きなんだ」
「嫌いな男がいたら会ってみたいわ」
「そ」
憎たらしい顔を掴むとぎゅうっと自分の胸に押し付けた。頭を抱え込み離れないようにする。
「わっぷ。なに!?」
「おっぱい好きなんでしょ。僕のもいいかんじに育ってるから味わってよ」
「や、おっぱいっても違う…」
と、言葉が止まる。熱い手のひらが乳の両サイドに触れてぐっと寄せ集めた。
「おい、なんだこの乳」
「鍛えてるけど力を抜けばこうなるよ」
ムキムキ固そうに見える乳も、普通にしていれば柔らかい。測ったことはないけど寄せ集めればGカップくらいにはなるだろう。
「もっと早く教えろよ」
「だって抱く時には力が入るじゃん」
「いやいやいや、その前の時とかさ揉ませて欲しかった」
あーだこーだのイチャイチャタイムに乳を揉ませろと。それで満たされるなら良いけど。
「この乳でいいなら好きにしてよ」
「やった、マジで。へへへ」
男の胸に顔を埋め幸せそうに笑う恋人を見ていたらさっきまでのモヤモヤが晴れていく。
「早く帰って生で楽しんでよ」と囁くと、恋人は激しい勢いで頷いた。
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