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ベッドに二人並んで腰掛けた時、善さんが呟いた。
「姫始めってところかな」
「ひめはじめ……?」
「年が明けて初めて体を重ねること」
聴き慣れない言葉に首を傾げれば、善さんは笑顔で答えてくれた。
きっと、それは大人が知る言葉。
普段だったら、恥ずかしくなってしまったかもしれないけれど、私の頭の中ではそれよりも、一つの疑問が生まれた。
「何で『姫』って言うの?」
次は、善さんが首を傾げる番だった。唸りながら、気難しい顔で善さんは呟く。
「……言われてみれば、言葉の由来まではわからないな」
「善さんでもわかんないことあるんだ……」
「そりゃあ、僕は……」
「?」
言い澱んだ言葉の先は言わないまま、善さんは笑みを浮かべる。
「唯は僕の気付かないところまで気がついて、すごいね。着眼点の鋭さは昔から変わらないや」
「ありがと。善さん」
頬に手を当てて優しく口づけを施してくれた。唇を一瞬だけ重ねる優しいキス。善さんとのキスはとても甘酸っぱい味がする。
なんだか照れ臭くて笑みが溢れた。
「ふふっ……」
「唯、どうかしたの」
「今年、初めてのチューだね」
なんとなく、そんな軽い冗談を言いたい気分だった。
だけど、善さんの目は私の言葉をきっかけに、ギラリと光った。
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