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「あの空間に囚われていた者は、つじつまが合いそうな人間は数年記憶を失ってさまよっていたことにして家族の元に帰した。あの空間に長くいすぎた者には、架空の記憶を植え付けて社会復帰させた。もちろん戸籍も捏造して置いた。」
数日後、灯はとある飲食店でハンバーガーを食べながら知り合いのエージェントの報告を聞いていた。
「いやーいつもながら見事な手際だね。」
大体、灯が怪異を倒したあとの事後処理は彼が行っている。今回も彼は、領主の作った空間に囚われていた数百人もの人々を、世間に悟られず穏便に社会復帰させることに成功したのだ。
「礼を言うのはこちらの方だ、この国の治安が守られているのも、君達のおかげだからな。」
その時、灯のスマホが振動した。
片手でハンバーガーを食べながら画面を見た灯の顔がけわしくなる。
「あげる。」
灯は食べかけのハンバーガーをエージェントに押し付けると、席を立つ。
「何があった!?」
後ろから声を掛けるエージェント。
「ワンチャン…この国滅ぶかも。」
灯はそう言い残すと店を飛び出した。
「死角形」に続く
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