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閉じられた瞼に長いまつ毛。
白くきめ細やかで、滑らかな肌。
幼さを残し、大人になりきれていない顔つき。
もしこの人形が本物の人間であったなら、私に近い年頃なんだろう。
私がもっと幼く純粋であったなら、人形の可愛らしさに喜んでいたのかもしれない。
けれど高校にあがった私は知っている。この等身大の人型がとても不潔でおぞましいものであることを。
Webサイトや雑誌の巻末に載っている広告から、こういう商品の情報を嫌でも叩きつけられてしまうからだ。
さらさらストレートの黒髪に乗せられたヘッドドレス。華奢な身体にはフリルが躍るエプロンドレスが着せられていた。
このメイドじみた格好がさらに私の嫌悪感を煽る。とっても上品で清純そうな外見をしていながら、実際は持ち主の男が抱く汚ならしい欲望を叶える仕事内容を象徴しているんだから。
『やわらか感触に従順AI。愛玩用アンドロイド「のぞみ」とのラブラブ生活を満喫しよう!』
ふざけたキャッチコピーの書かれたチラシにこの人型の詳細と、そっくりな写真が掲載されている。写真の中のアンドロイドが人当たりのいい笑顔を浮かべているという違いはあっても。
お母さんが出て行って荷物が減り、利用されなくなった地下室にお父さんはこんな物を隠していたのか。
少しだけ同情してしまう。それはきっとお母さんと私のせいだから。
ごめんなさいだなんて、決して言わないけれど。
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