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昨日と同じようにのぞみを一階に連れ出し、テレビを見せる。点けて最初に映ったチャンネルではサッカーの試合が放送されていた。
男性選手だけが走るピッチをのぞみは不思議そうに眺めている。男女不揃いなのは、ボールが追われているのはなぜか。ルールを知らないのぞみにとっては謎の光景なんだろう。
ゴールを決めた選手にチームメイトが群がり、抱き着いたりわしわしと頭を撫でて労う。するとのぞみの頬がぴくりと動いた。
しかしそれも一瞬。試合が再開されると選手たちはそれぞれのポジションに散ってボールを追ったり待ち構えたりする。またのぞみが無表情に戻った。わかりやすい。
「違うの見たい?」
「はい」
あんまりにも退屈そうだからチャンネルを変えることにした。
適当にボタンを押すと、いきなり怒号が飛び込んできた。
「何よ、あんたなんか!」
知っている……嫌というほど知らされたドラマだ。迫真の演技で叫ぶ女優の声に、背中が冷たくなり息が詰まる。
「あんたみたいな奴、夫に選んだのが間違いだったわ!」
「あ、あぁ!」
これ以上聞きたくない。私はとっさにリモコンでテレビを消した。
「マコト様?」
呼吸が荒い。うまく吸ったり吐いたりできない。
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