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「……もういいよ、ありがと」
私がそう言うと、のぞみはあっさり離れてくれた。
「良かった。マコト様が苦しそうだったから、わたし……」
「心配してくれたの?」
「はい、すべてのご主人様に気持ちよく、楽しくなってもらうのがわたしの役目ですから」
満面の笑みでドヤ顔ののぞみ。でも気持ちよくは余計だ。未成年だぞ私は。
ふう、と一息つく。のぞみの稼働時間も残りわずかだろう。大したことはできやしない。なら……。
「さっきテレビに映ってたドラマね、ちょうどお父さんとお母さんが離婚したときに放送されてたんだ。あれ再放送」
私を心配してくれたのぞみに真相を話すのが筋だろう。それに私の自己満足というか、今まで誰にも話さなかったことを吐き出せば楽になるんじゃないかという希望もあった。
「別にお父さんとお母さんの仲が悪かったわけじゃない。海外でしかできない仕事をしたいお母さんを尊重して、お父さんも納得して別れたんだ」
そう、お父さんは何も悪くない。
優しく、大事にしてくれると豪語するのぞみの判断も、きっと間違ってないんだろう。けれど――
「そのタイミングでさっきのドラマが放送されてさ、ドロッドロの不倫モノ。離婚なんてあのドラマみたいって、周りにからかわれた……」
調子よく喋っていたのが途切れてしまう。また胸の奥から冷たい感情が湧き出てきて、言葉を遮断する。
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