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 私が泣き止む頃に、のぞみの電池切れが近いことを知らせる電子音が鳴った。時間は非情だ。  涙に濡れた顔をこすりながら、のぞみを地下室へ。  挨拶も何もなしにのぞみを充電器に寝かしつけた。  本当は何かのぞみの言葉を聞きたかったし、私も当分会えないから一応のお別れをしておきたかった。けれど電池の残量が一定以下になると意識がはっきりしなくなり、充電器まで歩かせるだけの状態になってしまうらしい。  こんな風に「物」として扱うのは嫌だ。友達として別れたかった。私は昨日までの自分からは想像もできない考えに変わっていたことに気付く。  同時に、泣いてストレスを発散できたおかげで冷静にもなれていた。  明日にはお父さんが帰ってくる。私にのぞみを発見されたとなっては一大事だろうから、対策が必要だ。  私は地下室のパソコンを起動する。パソコンはのぞみの充電ベッドに接続されていて、彼女の設定だとかを寝ている間に操作するためのものだ。  昨日ネットで調べた情報とパソコンの横に置かれた説明書を参照しながら、のぞみのメモリーへとアクセス。  私と会っていた二日分の記憶を用意した外付けハードディスクに保存して、のぞみの中からは削除する。これでよし。  次にお父さんがのぞみを起動したときには、のぞみは私のことを忘れている。それでも私がのぞみと会うときは……保存した記憶を戻せばいい。  ハードディスクをパソコンから外し、地下室を後にする。  ドアに手をかける前に、ちらりと眠るのぞみを見やった。  バイバイ……またね。
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