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 あれから数日後、無味無臭(むみむしゅう)な日常を過ごす私のもとに、お父さんからメールが届いた。  長い文面から私が察した通り、のぞみと会っていたことはバレていた。  メールによれば、出張から戻ったお父さんがのぞみを抱こうとすると、あろうことか拒否されてしまったらしい。  その時にのぞみは「抱き合う前にすべきことがある」というワードを口走ったけれども、どこでそれを覚えたのかまではわからなかった。  私には散々抱き着いたり壁ドンまでやったのに、お父さん相手に私の教えを実践したのぞみにクスリと笑う。  気になったお父さんは、のぞみをスリープさせてメモリーを確認した。メインメモリーは私が消したから何も残っていなかったけれど……防犯用に残されるバックアップメモリーが、のぞみの言動に影響を与えていたことをお父さんは突き止める。  おかげで私がのぞみに人の文化を教えようと行動したことも、柄にもなくセンチになって泣いてしまった様子も、すべてお父さんに見られてしまった。  メールの後半はお父さんからの謝罪で埋め尽くされていた。お前が寂しいのに気付いてやれなくてごめんとか、周りにからかわれていたなんて知らなかったとか……お父さんは悪くないのに。  本当に謝らなきゃいけないのは、今まで避けてきた分歩み寄らなきゃいけないのは、私なのだから。  そしてもう一度家族としてやり直そうとも言ってくれた。  仲直りは面と向き合ってしたいから、「私も謝りたい」とだけ短く返信。  最後に追伸で書かれていた「マコトとの記憶をメインメモリーにコピーしておいた。また会いに行ってやれ」という一文が私をときめかせる。
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