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まるで棺桶のような充電器の中で眠る少女のアンドロイドは、ロボットというよりもホラー映画の吸血鬼のように美しかった。
蓋をわざわざガラス張りにして寝ている姿を拝めるようにしているのもメーカーの工夫なのだろうか。
お父さんの恥部と冷たい目で見ていた私も、怖いもの見たさというか次第にこの人型へ興味が湧いてきた。地下室のさらに奥へと踏み出す。
ピー、ピー。
「きゃっ!」
まるで防犯装置のように鳴った電子音に驚き、声が出てしまう。
充電器の蓋が自動で開いたかと思えばメイド服のアンドロイド、のぞみがゆっくりと上半身を起こした。
どうしよう、近くで見たかっただけで起こす気なんてなかったのに。
はらり、はらりと長い黒髪が白い頬を撫で、埃ひとつ付いていないエプロンドレスに覆われた人工の肉体がよりリアルな存在として私に見せつけられる。
勝手に動くな。後で面倒の種になったらどうするの。
私の思いをよそに長いまつ毛の乗った瞼が開かれると、くりくりとした瞳が私に向けられた。
「おはようございますご主人様」
のぞみはチラシの写真そっくりに微笑む。しかしすぐに私がお父さんではないと気付いたのか、不思議そうに小首を傾げた。
「……あなたは、どなた?」
「こ、ここ私の家なんだけど。人ん家に来といて誰とは何よ」
しどろもどろになりながら答える。お父さんの秘密を暴いてしまったばかりか、それが勝手に動き出して喋っているのだ。
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