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「とりあえず上、行こっか」
メイド服の袖を引き出口へ。まずはお父さんが作ったお粗末なエデンの園から、のぞみを連れ出そう。
開けっ放しのドアの向こうに続く階段を見たのぞみがびくりと肩を震わせる。怖いんだか驚いてるんだか、割とマジで部屋の外を知らないらしい。
「私のことを愛しているんなら、私の住む世界を知ってみなよ」
「マコト、様……」
言葉で揺さぶりをかけてやったつもりだけど、どう感じてるんだろう。のぞみは無表情だ。
私はのぞみを部屋から連れ出す。言葉がだめなら行動あるのみだ。
地下室ではスムーズに歩いていたアンドロイドも、初めての階段を上る姿はぎこちなかった。そりゃそうだ、一階に上がろうものなら私に存在がばれていたんだから。
あと少しというところでのぞみが後ろに傾き、慌てて背中を支えてやる。エプロンドレス越しに触れる人工筋肉の背中は、私のものより柔らかかった。
「マコト様!」
「おっと、それはお預けよ」
ぱあっと表情を明るくして抱き着こうとするアンドロイドを押しとどめる。こんなところでしたら本当に真っ逆さまなのをわかっているんだろうか。
ぐいっとのぞみの背中を前に押してやり、どうにか一階へ。
……まるで人間みたいな体重だ。もっと重たいと思ってた。
それに温かさはないけれど、本当に柔らかだった。
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