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リビングに連れていかれたのぞみはきょろきょろと周囲を気にしている。
観葉植物や食器棚、そして窓からの景色。私にとって当たり前に存在しているものすべてがのぞみには珍しいようだ。
「驚くのはこれからだよ」
テレビのスイッチを入れるとのぞみはさらに驚愕した。
ヨーロッパの街並みにサバンナの草原。私ですら行ったことのない世界の景色に見とれるのぞみ。
「マコト様、すごい。すごいです!」
子供のようにはしゃぐ姿はとっても純粋で、男を惑わす淫具であることを一瞬忘れさせる。
そう、彼女は愛されて寝るだけ。それだけに享楽的で牧歌的な思考だ。
だからのぞみに悪意はないし、他人から悪意を向けられることも知らない。まっさらな子供のようだった。
もしかすると、私が手を振り払ったあの瞬間がのぞみを襲った最初の敵意だったのかもしれない。
「ねえのぞみ。お父さんってさ、普段は優しい?」
持ち主から多少乱暴に扱われることは想定されているんだろうけど、のぞみがあまりに純朴なものだから、私からはこんな疑問が湧いた。
「はい、とっても優しいのでご主人様との逢瀬は楽しいです」
私が話しかけるとちゃんとこちらへ視線を向けてくれる。従順AIというのはよくできているものだ。
お父さんへの評価が高いのもAI設定が従順なせいなのやら、本当に大切にされているからなのやら疑わしい。
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