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やっぱりのぞみにとって絵本は珍しいのか、ページをめくるたびに目を白黒させている。
私が子供の頃に……まだお母さんがいた頃に買い与えられた絵本を読んで、だ。
人はどんなことをして何を思うのか。のぞみに投げかけた課題がそのまま自分に反響したように脳内に広がった。
両親が離婚して以降、私は学校でも周囲との交流を断ってしまった。
そのきっかけは小学校卒業間際。中学校、高校と環境が変わった時にまた友達を作ろうかとも思ったけれども、あの時のショックが糸を引いて……。
おっと、うっかり過去を思い出して心の傷を開いてしまうところだった。危ない危ない。
私が心の自傷をどうにか回避したとき、のぞみはとっくの昔に絵本を読み終えて漫画に移っていた。だけど――
「そこっ! 今だよ、行け!」
まるでスポーツか格闘技でも観戦するように読んでいる。これって奥手な女の子とツンデレ少年の恋愛漫画だよ?
「もう、何で? ここでキスしちゃいなよ」
なるほど。キスどころかその先の専門家さんにとって、この漫画の登場人物は素人だからイライラするわけだ。
だがのぞみが応援しているのはツンデレ少年ではなく、別の男が女主人公に遊び半分で手を出そうとしているシーンだった。……ストーリーをまるでわかっていない。
「のぞみ。そう簡単に人は好きになったり、なられたりするもんじゃないんだよ」
……まあ、彼氏なんか一度も作らず。それどころか四年近く友達すら作っていない私が卑屈なだけかもしれないけれど。
「……?」
熱狂していたのぞみは首を傾げる。まだまだ人間を理解させる道のりは長そうだ。
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